日経産業新聞に掲載されました

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日経産業新聞に掲載されました

日経産業新聞より抜粋(PDF)

「500円、500円、500円」
朝6時。南海魚市協同組合(大阪府阪南市)が運営する広さ10畳ほどのセリ場にセリ人の声が響く。
この日の入荷は大阪湾内で水揚げされた魚50箱程度。仲買人の中谷嘉幸(42)小アジが約20匹入った箱を500円で競り落とした。

この小アジ。大阪市の中央卸売場などに運ばれると、通常は200円程度でしか取引されない。
高値で落とした中谷の商売のカギを握るのが魚介類の電子商取引システムを運営する旬材(大阪府吹田市)だ。
社長の西川益通(64)は漁師や漁協といった生産者と、スーパーや飲食店などの顧客を直接結びつける仕組みを構築。
新鮮な魚が欲しいときに手に入る便利さが付加価値を生んだ。500円で中谷が仕入れた小アジも加工賃や輸送費を乗せ、700程度で地場スーパーなどに卸せるという。

稼げる漁業狙う

西川はヤンマーの営業マンとして、30年間にわたり漁船の売り込みで全国の港を飛び回った。
目にしてきたのはいつも価格下落などの悩まされる漁師の窮状。「このままでは漁師という職業は成り立たない。
流通を変えることが再生につながる」と55歳で早期退職し旬材を設立した。
目指すのは売れる量や売価が予測しやすい「計算できる漁業」だ。

魚の入荷は不確実さが伴うだけに、今年に入り、産業技術総合研究所(つくば市)と共同で顧客が欲しい魚を安心して予約ができるシステムを開発。
11月からはネット通販のフェリシモと組み、鮮魚の通販も始める。
農林水産省によると日本の漁業就業者数は昨年末で約21万人。調査を開始した1954年以降、一貫して減少を続ける。
稼げる漁業となれば、新たな雇用を呼び込むかもしれない。
買い物客でにぎわう週末の東京・自由が丘。雑貨店の軒先に月1回、産地直送の野菜マーケットが出現する。仕掛け人は農家出身の20代、30代の若者たちだ。
代表の児玉光史(31)は「東京で働きながら実家の手助けをできないか」と、親から野菜を仕入れて直売する方策を思いついた。
3年前に「セガレ・jp」を立ち上げた児玉が前面に打ち出したのは「セガレ」のブランド化。
顧客に生産者である両親のエピソードを語り、どんな育て方をしたのかも詳しく説明する。
「“セガレ”が売ること自体が野菜や果物の付加価値になる」という。
東京大学大学院教授の西垣通(61)は「均質な価値を生み出すのがこれまでのネットの役割だったが、生産者と消費者がネットで直接対話をすることで多様化が進むようになった」と分析。
ここから生まれた無数の市場がうねりとなり、大きな消費へと結び付く。

「ネットを使っている同業の町工場は当時ほとんどなかった」。

伊倉鈑金塗装工業(東京・目黒)社長の伊倉大介(34)は社長に就任した13年前を振り返る。

直接取引が拡大

大学在学中に創業者の父が死去。
伊倉が後を継いだのは一般顧客との直接取引がわずか2割という典型的な下請け企業だった。ネットに活路を見いだし、ブログを使って板金塗装の知識を発信。
日々の仕事ぶりもツイッターで公開し、ウエッブ限定の割引クーポンも取り入れた。今ではほとんどが一般顧客。かつての下請けの姿はそこにはない。
ネットをバネに進むオールド産業の復活。自動車各社などが競う高度道路交通システム(ITS)は交通の再生が狙いの1つだ。

日産自動車IT&ITS開発部エキスパートリーダーの福島正夫(57)は「人の移動をサポートするのは自動車メーカーの永遠の命題」と力を込める。
新潟県新発田市もITSの社会実験で路線バスの立て直しを模索する。
全地球測位システム(GPS)で走行するバスの位置を把握。街角の専用端末やパソコン、携帯電話から誰もが気軽に運行状況を知ることができる仕組み作りで、地球の足をよみがえらせる。
成熟期や衰退期に入り、それに気づきながらも古くから続く商習慣を変えることが難しかったオールドな日本。これまでの仕組みを大きく変えるネットのチカラは、成熟産業が新たな価値を生み出す可能性を広げていく。

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